この記事は、PSI(東京大学工学部システム創成学科知能社会システムコース) Advent Calendar 2018 の 22 日目です。
はじめに
東大の応用プロジェクトという授業で、LabVIEW というソフトウェアを使ってセンサーアプリケーションを作ることになりました。
しかし、大学から支給される Windows PCが遅い。信じられないくらい遅い。
LabVIEW を立ち上げるのに10分とかかかります。平気で。
それが許せなくて自分のパソコンで LabVIEW をやりたくなりました。ところが、macOS しか持っていない僕はインストールできない。(LabVIEW 自体は macOS にもインストールできるみたいですが、ライセンス関係がめんどくさそう)
さらに、他の授業でも Window でしか動かないソフトウェアを使うことがあり(ここで支給される PC も遅い)、自分も Windows が使える環境があると便利なのでインストールを試行錯誤しました。
というか、東大はまともな PC を用意してくれ。
Boot Camp
Mac に Windows をインストールする一般的な方法として BootCamp があります。Mac を買った時からデフォルトでインストールされているアプリで、Windows をインストールしてデュアルブートを可能にしてくれます。
Boot Camp アシスタントで Mac に Windows 10 をインストールする - Apple サポート
しかし、重大な欠点があります。それは、マシンのディスクのパーティションを切ってそこにインストールする ことです。わざわざ Windows のためにマシンのリソースを汚染されたくない。
USB にブートイメージをインストールして Mac を汚染せずにポータブルな Windows USB を作りたいというのがこの記事の趣旨です。
Windows To Go
Windows を USB にインストールする手法として Windows Enterprise で提供されているらしい 「Windows To Go」 というソフトウェアがあるらしいです。しかし、Windows Enterprise 持ってないので使えない。
さらに調べると、AOMEI Partition Assistant とかいう怪しげなソフトウェアで Windows To Go という機能が搭載されていて USB に Windows をインストールできるらしい。便利!しかも、Standard 版は無料!
Windows 10 To Go USBを作成してポータブル作業環境を取得します
早速インストールしてみたら、Windows To Go は有料版でないといけないらしい。5000円くらいするけど早速買ってやってみました。
が、Mac で起動しても途中で落ちて macOS にフォールバックしてしまい、役には立ちませんでした。クソが
90 日間返金可能ということなので返金してもらいました。(英語の対応だったけど如何に役に立たなかったかを説明したらちゃんと返金してくれた。)
自分でゴリゴリやる
色々思考錯誤したり、記事を探したりする中でこの記事に出会いました。
ここで紹介されている方法を参考にやったらうまくいきました。マジでありがとうございます。
ちなみに、この記事で紹介されていたのは Windows マシンでインストールする方法ですが、今回は Mac しか持っていない人向けにアレンジしています。
諸事情あって 2 回 Windows をインストールしたのですが、1回目はこの記事の通り Windows マシンでインストールして、2 回目は Mac だけでインストールしたので、正しく動くことは確認しています。
必要なもの
Mac
まず、何らかの Mac
が必要です。
僕の Macbook Pro のスペックはこんな感じです。
- MacBook Pro (Retina, 13-inch, Early 2015)
- macOS Sierra 10.12.6
USB メモリ
次に USB
が 2 本必要です。
1 本はインストーラ用、もう 1 本が Windows ポータブル USB になる本番用です。
インストーラ用には、以下の 64 GB の USBを
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本番用には、同じ USB の 128 GB のやつを買いました。
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2本ともまぁまぁ高いですが、書き込み性能が 100MB / s 以上出るので OS として使うために必要な経費ということで泣く泣く買いました。 Windows のインストーラは 4 GB くらいあるのですが、高速な書き込み性能を持っているのでインストールも比較的早く終わりました。
ぶっちゃけ、インストーラ用の USB は本番用の USB が完成したら必要ないので、30GB くらいの安いものでもいいと思います。(コピーが遅いかもしれないけど)
あと、2本の USB は容量が違ったほうが見分けがついて便利です。
Windows ライセンス
そして Windows の ISO ファイルとライセンス
が必要です。
Windows のライセンスは調べてみると 1 万円は超えるみたいです。高い。
ただ、東京大学は Microsoft 製品を無償で学生に提供していて、Windows のライセンスもあったのでそれを利用してライセンスを取得しました。
UTokyo Microsoft Windows 10 for students | 東京大学
ISO ファイルは、東大のライセンスを購入したページにしたがってダウンロードしました。
それ以外の場合は、以下のリンクからダウンロードできるようです。
Windows 10 のディスク イメージ (ISO ファイル) のダウンロード
今回は、Microsoft Windows 10 Education
をインストールしましたが、他のエディションでも基本的にインストール方法は変わらないと思います。
根気
ディスクコピーには時間がかかりますし、オペミスでディスクを失う可能性もあるので細心の注意が必要です。
根気強くやっていきましょう。
免責
ディスクを触るコマンドがあるので自己責任でお願いします。
インストール手順
大まかな手順は以下の通りです。
macOS
でインストーラ用 USB をフォーマット- インストーラ用 USB にインストーラモードの
Windows
をコピー - インストーラ用 USB から
Windows
を起動 - 本番用 USB を
diskpart
(windows のコマンド)を使ってフォーマット - 本番用 USB に
Windows 10
をインストール - macOS に切り替えて、
Boot Camp Windows サポートライブラリ
をダウンロードし、インストーラ用 USB にコピー - 本番用 USB で
Windows 10
を起動 - Windows 10 に Mac 用の様々なドライバーを
Boot Camp Windows サポートライブラリ
を使ってインストール - Windows 10 のライセンス認証
かなり長いですが、頑張って行きましょう。
1. macOS でインストーラ用 USB をフォーマット
macOS に インストーラ用 USB を差した状態で、ディスクユーティリティ
アプリを開きます。
USB を選択した状態で上にある 消去
ボタンをクリックし、以下の項目を入力して 消去
ボタンを押して USB をフォーマットします。
- 名前:
Windows
(これは別の適当なものでもいいです) - フォーマット:
exFAT
(インストールするファイルサイズが大きいのでこれが必要です) - 方式:
マスター・ブート・レコード
(GUID パーティションマップ
でも大丈夫だと思いますが、今回はこっちで)
注意としてこれによって USB ディスクの中身は全て失われます。また、間違って別のディスクを消去することがないように 気をつけてください。
2. インストーラ用 USB にインストーラモードの Windows をコピー
Finder で Windows の ISO ファイルをダブルクリックして開きます。
ISO ファイルの中身が表示されるので、中身を全てコピーして、フォーマットした インストール用 USB の一番上のルートディレクトリにペーストします。この操作は Finder アプリ上で行います。(dd
を使ってやってもうまくいきませんでした。)
かなり内容が大きい上に多いので時間がかかります。僕の環境では、10 分くらいかかりました。その間に洗濯物でも干しておきましょう。
3. インストーラ用 USB から Windows を起動
ここで一旦 Mac をシャットダウンします。
そして、インストーラ用 USB だけを差した状態で alt
キー(または option
キー)を押しながら起動します。音がするまで alt
キーを押していると起動ディスクを選択する画面が表示されます。
オレンジ色の EFI Boot
を矢印キーで選択して Enter
キーを押してインストーラ用 Windows を起動します。
Windows が起動するはずです。初期化が終わると以下のような画面が表示されるので 次へ
ボタンを選択します。
ちなみ画面サイズがバグってるので文字がとても小さいです。この文字が小さい地獄はステップ 8 で Mac のデバイスドライバをインストールするまで続きます。
「今すぐインストール」のページが表示されたら、今すぐインストールせずに左下の コンピューターを修復する
をクリックします。
トラブルシューティング
を選択し、
コマンドプロンプト
を起動します。このコマンドプロンプトは管理者権限で起動されます。
4. 本番用 USB を diskpart を使ってフォーマット
ここで、本番用 USB を Mac に差し込みます。
diskpart とは、Windows のディスクをフォーマットするコマンドです。(多分)
起動したコマンドプロンプトで diskpart
と入力して Enter
を押すと diskpart
の画面に切り替わります。
diskpart
diskpart の画面では、先頭に DISKPART>
が表示されます。これ以降のこの節のコマンドは、diskpart
の中でのコマンド実行です。
list disk
コマンドでディスクの一覧を表示し、本番用 USB のディスク番号を確認します。USB のディスクサイズが違っているとわかりやすいです。
select disk <number>
でディスクを選択します。僕の環境では、3
番でした。
list disk
をもう一度実行し、選択したディスクの左側に白い *
が表示されて正しく選択できていることを確認します。
もし、異なるディスクを選択していた場合 Mac のディスクが吹っ飛ぶ可能性があるので十分注意してください
list disk select disk 3 list disk
clean
で選択されたディスクを初期化します。
create partition primary size=350
で ブート用パーティション領域
(350 MB
)を作った後、create partition primary
で残りの領域のパーティションを作成します。
create partition
するときに、エラー(DiskPart は最新の状態でないオブジェクトを参照しています・・・・
)が発生することがあります。その時は、diskpart で rescan
を実行して、最初の list disk
からやり直して下さい。
それでもうまくいかない場合は、exit
で diskpart を終了して、再度 diskpart
を実行するところからやり直してください。(それでもうまくいかない場合は知らん)
clean create partition primary size=350 create partition primary
list partition
でパーティションを確認し、パーティションが 2 つ作成されていることを確認します。
select partition
で 350 MB
のブートパーティションを選択し、format fs=fat32 quick
でフォーマットし、active
でアクティベートし、assign letter=b
で、B
ドライブとして設定します。
次に、select partition 2
でメインパーティションを選択し、format fs=ntfs quick
でフォーマットし、assign letter=o
で、O
ドライブとして設定します。
list partition select partition 1 format fs=fat32 quick active assign letter=b select partition 2 format fs=ntfs quick assign letter=o
雰囲気としてはこんな感じです。(画質が悪くてすみません)
これで、本番用 USB のフォーマットは完成です。exit
で diskpart を抜けます。
exit
5. 本番用 USB に Windows 10 をインストール
そのまま、コマンドプロンプトで Windows 10 をインストールしていきます。
Windows のイメージファイルは、install.wim
か、install.esd
というファイルです。どちらでも同じようにインストールすることができるらしいです。
僕の環境では install.wim
だったので、それがない場合は install.esd
と読み替えてください。
まず、install.wim
を探します。install.wim
はステップ 2 でコピーした ISO ファイルの sources
ディレクトリの下にあります。まず、コピーした USB のディスクドライブを探します。
wmic logicaldisk get caption
で利用可能なディスクドライブの一覧が表示されます。
wmic logicaldisk get caption Caption B: C: D: O: X:
B
と O
は、さっき作ったドライブで、X
は現在いるドライブです。僕の環境では、C
ドライブに install.wim
がありました。dir C:¥sources¥
でファイルの一覧が表示されるので install.wim
を目グレップで探しましょう。
違う場合は、別のドライブにあるはずです。
dir C:¥sources¥
Windows のイメージを本番用 USB にインストールします。(Dism /Apply-Image /ImageFile:C:¥sources¥install.wim /Index=1 /ApplyDir:o:¥
)コマンドの C
ドライブは、発見したドライブ名に差し替えてください。
Index
の番号が不安になりますが、これは複合 Windows イメージの何番目のイメージを使うかということを表すらしいので 1
で大丈夫だと思います。(参考:Windowsイメージ操作まとめ - Qiita)
これも時間がかかります。僕の環境では 15 分くらいかかりました。この間に最後のステップに備えてシャワーでも浴びておきましょう。
Dism /Apply-Image /ImageFile:C:¥sources¥install.wim /Index=1 /ApplyDir:o:¥
最後にブートパーティション領域を初期化します。
o:\Windows\System32\bcdboot o:\Windows /l ja-JP /s b: /f ALL
/l
の l
は、小文字の L
です。見分けがつかなくて一回 I
に typo しました。ややこしい。
以上で Windows のインストールは完了です!お疲れ様でした!
コマンドプロンプトを exit
で抜けて、シャットダウンしましょう。
exit
6. macOS に切り替えて、Boot Camp から Windows サポートライブラリ をダウンロードし、インストーラ用 USB にコピー
あ、完成したと思いました?残念。まだあります。
このまま Windows を起動することはできますが、Mac のハードウェアのデバイスドライバがないので wifi に繋げません。外部ネットワークにアクセスできないので、ライセンス認証もできないですし、デバイスドライバーをダウンロードすることすらできません。残念でした。
ここで、起動するのは Windows ではなく macOS です。(macOS が起動しない場合は、alt
キーを押したまま電源を入れ Macintosh HD
を選択して起動してください)
Windows のための Mac のデバイスドライバは Boot Camp が Windows サポートライブラリ
として提供しているのでそれを利用します。
Mac に Windows サポートソフトウェアをダウンロードしてインストールする - Apple サポート
Boot Camp
アプリを起動して、メニューバーにある アクション
をクリックし、Windowsサポートソフトウェアをダウンロード
をクリックします。
場所を指定してダウンロードします。全部で 2.8 GB くらいあるので気をつけてください。
ダウンロードが終わったら、インストーラ用 USB にダウンロードした WindowsSupport
ディレクトリをコピーします。コピー先はどこでも大丈夫なので一番上がいいんじゃないでしょうか。
インストーラ用 USBの Windows イメージはもう使わないので、コピーする前にインストーラ用 USB を消去してフォーマットし直しても大丈夫です。
コピーが終わったら macOS をシャットダウンしてください。
7. 本番用 USB で Windows 10 を起動
インストーラ用 USB を抜いて、本番用 USB を差してください。いよいよ Windows を起動します。
alt
キーを押しながら Mac の電源を入れてインストーラの時と同じようにオレンジ色の EFI Boot
を選択して Windows 10
を起動します。
Windows の初期化画面が出てくるので、みなさんのお好みの設定で初期化を進めてください。
ただ、ネットワークの設定はデバイスを認識しないため、スキップしてください。
初期化が終わると Windows 10
が起動します。
8. Windows 10 に Mac 用の様々なドライバーを Boot Camp の Windows サポートライブラリ を使ってインストール
Windows 10
が起動したら、インストーラ用 USB を差してください。
エクスプローラで(Mac の Finder みたいなアプリ)インストーラ用 USB の中身を開いてステップ 6 でコピーした WindowsSupport
を探します。
WindowsSupport¥BootCamp¥Setup
をダブルクリックして実行すると Mac のデバイスドライバがインストールされます。
インストール中に画面サイズがいい感じになって感動すると思います。
インストールが終わると再起動するのでなされるがままに再起動しましょう。
9. Windows 10 のライセンス認証
最後に Windows 10 のライセンス認証をします。
スタートメニュー
(左下のウィンドウズアイコン)をクリックし、設定
(左側の歯車マーク)をクリックします。
更新とセキュリティ
を開き、ナビゲーションバーから ライセンス認証
を表示します。
ライセンス認証をするために プロダクトキーを変更する
をクリックして、ライセンスキーを入力します。
これで、晴れてポータブルな Windows 10 の USB ドライブが完成しました。お疲れ様でした。
使い方
これからは好きな時に Windows を使えます。
Mac に USB を差した状態で alt
キーを押しながら電源を入れると OS を選べます。
alt
キーを押さないで起動した場合は前回起動した OS が起動します。
USB が刺さっていない時は macOS が起動します。
簡単ですね。
何で2回もインストールしたか
これは後日談なのですが、冒頭で諸事情により2回 Windows をインストールしたと書きました。
諸事情あって 2 回 Windows をインストールしたのですが、1回目はこの記事の通り Windows マシンでインストールして、2 回目は Mac だけでインストールしたので、正しく動くことは確認しています。
これは、1回目は 64 GB のUSB メモリに Windows 10 をインストールして授業に挑んだわけですが、LabVIEW がインストールするのに全部で 45GB
を必要とするということが発覚し挫折したからです。
てか、45 GB
ですよ!!!!奥さん!!!信じられますか????
64GB のうち Windows をインストールした後に空き容量が 20 GB
くらいしか残っていなかったので、泣く泣く 128 GB の USB を買ってインストールし直しました。
以上恨みつらみでした。
最後に
かなり長くなりましたが、お疲れ様でした。ぜひポータブルな Windows USB ドライブライフを試してみてください。